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テレワークと育児の両立は、夫側の家事育児参画が鍵

コラム

テレワークと育児の両立は、夫側の家事育児参画が鍵

宮原 淳二(株式会社東レ経営研究所 ダイバーシティ&WLB推進部長)
令和三年度取材

 新型コロナウイルス感染拡大の影響から、在宅勤務等のテレワーク制度の導入が一気に進みました。また、これまで制度としてはテレワークを導入していながら、利用者は育児や介護を担っている一部の従業員というケースが多かった企業でも、2020年4月の1回目の緊急事態宣言以降、従業員の多くがテレワークを経験したと思います。それでは、これまでなぜテレワークが普及しなかったのでしょうか。その理由として「会社のセキュリティ上の問題」「従業員が自宅でテレワークできるスペースが無い」など多くの課題がありましたが、コロナ禍で外出を抑制し、従業員の安全を守ることが優先される中で、「やればできる」と感じた人も多かったのではないでしょうか。一方で、子育て中の家庭では、2020年のコロナウイルス感染拡大期に保育園や学校が休園・休校した影響で、自宅で子どもの面倒をみなければならなくなりました。その後も、オミクロン株などが猛威を振るう中で、感染者や濃厚接触者が出た保育園や学校などで休園・休校になるケースが多発し、翻弄され続けている家族も多いことでしょう。
 本稿ではテレワークと育児の両立を実践されている親世代の状況について、夫婦間の満足度などに焦点をあて、どうすれば夫婦で家事育児が上手に分担でき、仕事が効率的にこなせるかを考えていきます。とりわけ夫側の家事育児参画の重要性について言及します。2022年4月より改正育児介護休業法が施行され、男性育休の取得促進に向けた措置の義務化に関する制度が段階的にスタートします。妻側に大きく偏っている家事育児がどう平等に分担できるか、テレワークと関連付けて展開していきます。

コロナ禍の夫婦関係について

 令和2年度「男女共同参画の視点からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響等に関する調査」では、生活全般の状況とコロナウイルスの影響について、夫婦関係の満足度も含め調査しています。その中で、家事や育児について、「夫の役割が増加」と「夫・妻の役割が増加した夫婦」は、それぞれ約42%が「夫婦関係が良くなった」と答えている一方で、妻の役割が増加した夫婦は、夫婦関係が「これまでと変わらない」と答えた割合が63.2%、「やや悪くなった」と回答している割合は10.3%となっています。この理由については、テレワークが定着し始めた中、夫が自宅で仕事をするようになった一方、食事の準備や子供の送迎などを妻に任せきりにしてしまっていることが想定されます。私の周囲でも、夫婦でテレワークをしているにも関わらず、夫が自分の仕事を終えた途端に子どもとTVゲームに興じて、仕事中の妻に「夕飯はまだ?」と言って呆れられたケースがありました。また夫はリビングなど広いスペースを使っている一方で、妻はキッチンスペースの脇で仕事をしていた、という話も聞かれました。夫婦の力関係でその逆もあるでしょうが、互いに気持ちよくテレワークができるよう、協力し合う姿勢こそが重要になってきます。どちらか一方が配偶者の態度に不満を抱えたままの状態でテレワークを実施していると、「自宅にいるより会社に行った方がストレスが無くていい」という状況に陥ってしまいます。未だに新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、子育てとテレワークをどう両立していくかが課題となっています。

<図表①>

図表1

出典:令和2年度「男女共同参画の視点からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響等に関する調査」

テレワークが家族にもたらす大きなメリット

 テレワークと育児の両立における最大のメリットは通勤時間の削減です。
 総務省統計局の社会生活基本調査によると、日本全国の平均通勤時間は、片道39分、往復1時間19分です。通勤に利用する交通手段の割合は車が最も多く、次いで、電車、自転車となっています。
 一方、首都圏の通勤者は、東京都内へ通う人の割合が多くなります。通勤手段は電車が主体です。首都圏の平均通勤時間を見ると、神奈川県、千葉県、埼玉県は、全国の中でも通勤時間が長い傾向にあります。

< 平均通勤時間(往復)>
・神奈川 1時間45分
・千葉  1時間42分
・埼玉  1時間36分

 3県の平均通勤時間を算出すると「往復1時間41分、片道50分程度」になります。私も神奈川県横浜市から東京の神田のオフィスへ通勤しており、往復2時間強かかります。テレワークが定着した中、都心から郊外へ引っ越しをする方も徐々に増えているようですが、多くの人は周辺3県から東京の勤務先へ通勤しているのが現状ではないでしょうか。
 テレワーク定着により通勤時間が削減されたメリットを享受し、育児との両立に役立てることが何よりも大切です。
 このほか、テレワークの浸透により、図表②にあるように、子どもの保育園の送迎の際、職場と保育園を往復する必要もなくなりました。大企業を中心とした企業内保育所や、鉄道会社が運営している駅型保育所を利用されている人もいますが、現在も多くの家庭は自宅からほど近い保育園に子どもを預けています。私自身も、終業後に時計を見ながら全速力で保育園に駆け込んでいる従業員をよく目にしたものです。コロナ禍でテレワークが定着したことで、自宅からショートカットで保育園に送迎ができるようになったことも、家族にとっての大きなメリットです。

<図表②>

図表2

育児介護休業法の改正により期待できること

 2022年4月より、改正育児介護休業法が施行されます。厚生労働省の調査結果では、男性・正社員がこれまで出産・育児を目的として休暇・休業制度を利用しなかった理由として、「会社で育児休業制度が整備されていなかったから」と「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから」、「収入を減らしたくなかったから」が上位にあがります。改正育児介護休業法は、そのような状況を解消すべく、以下の5つのポイントについて段階的に実施されます。

  • ① 育児休業を取得しやすい雇用環境整備、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務化(令和4年4月1日施行)
  • ② 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月1日施行)
    有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が無期労働者と同様の扱いになります。
  • ③ 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(令和4年10月1日施行)
    育休とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能となります。
  • ④ 育児休業の分割取得(令和4年10月1日施行)
    育児休業(③の休業を除く。)について、分割して2回までの取得が可能となります。
  • ⑤ 育児休業取得状況の公表の義務化(令和5年4月1日施行)
    従業員数1,000人超の企業は、育児休業の取得状況を年に1回公表することが義務付けられます。

 ただし、改正法が施行されたからといって、男性の育児休業取得率が急に向上するとは限りません。上司が制度をきちんと説明し、取得の意向を確認しても、育休の取得を阻害するような職場の雰囲気や、本人に「周囲に迷惑をかけたくない」という気持ちがあると、取得を躊躇してしまうケースが想定されます。その点については上司に対して研修を行うなどして、男性が育児休業を取得しやすい環境づくりに努めていただきたいと思います。いずれ子どもは大きくなり、中高生ともなれば親と過ごす時間も少なくなります。子どもが小さい頃は、一緒にいる時間を確保してほしいと心底思います。

今後に向けて

 図表③は、1回目の緊急事態宣言を経て、今後の家事・育児のニーズを夫婦に聞いている調査結果ですが、「配偶者にもっと家事をしてほしい」「配偶者にもっと子どもの世話をしてほしい」という項目において、夫と妻で倍近い差が出ました。多くの夫婦で、妻に家事や育児の負担が偏っている現状を垣間見ることができます。テレワークにより削減できた通勤等の時間を活用し、子どもの保育園の送迎とスーパーでの買い物に加え夕食の準備などをこの機会に実践するのも良いのではないでしょうか。このほか、子どもと遊ぶ時間や勉強を教える時間など、家事育児を上手に分担し、夫婦間のストレスを軽減するなど、日々の行動の積み重ねにより、夫婦関係の満足度は徐々に高まってくるものと思われます。

<図表③>

図表3

出典:令和2年度「男女共同参画の視点からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響等に関する調査」

 私の周囲では、夫婦でテレワークを実施することで、お互いを尊敬し合える仲になったという人もいました。出社が前提であった時期は、別々の会社に勤務していると、普段お互いの仕事振りを見ることはなかった中で、テレワークが浸透してからは、オンライン会議時に「妻が丁寧に顧客に接していた」、「夫が部下や周囲からとても信頼されているようだ」との声が聞かれます。テレワークを通じて「しっかり仕事をしているんだな」とお互い相手をリスペクトするようになり、夫婦関係が良くなったとの意見も聞かれます。夫婦関係を良好にして仕事もプライベートも充実して欲しいと思います。
 今後もいつ新しいウイルスが蔓延するか、恐らく誰も見当がつかないでしょう。大手鉄道各社では、22年3月に予定するダイヤ改正で、大規模な運行本数の削減を計画しています。テレワークが定着した中、もうコロナ前の水準には戻らないという判断をしているようです。従業員側も出社を前提とした働き方を見直し、テレワーク可能な仕事をさらに広げ、感染拡大防止を図りながら、仕事の生産性を高める努力をせねばなりません。
 最近ではワーケーション(ワーク+バケーションの造語)といって、観光地などで仕事をしながら、休日を家族と楽しむスタイルが徐々に広がっています。自宅にばかりいるとストレスが溜まるので、たまには非日常的な場所で仕事をするのも気分転換になります。「テレワーク=自宅で実施するもの」という考えに縛られず、たまにはこうした非日常を家族で経験するのも重要だと感じます。新しい生活様式を受け入れ、しばらくは新型コロナウイルスとの共生を図っていく必要がありそうです。



引用・参考資料

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